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休学期間を終えて

Oct 4, 2024

2023年の10月から約一年間の休学期間を終えて、昨日から大学に復学した。

早速1限があって、足取りは重めだったが久しぶりの講義は楽しかった。

休学の理由は、情報機構IPAが主催する未踏IT人材発掘プロジェクトというものに採択され、このプロジェクトに専念するためだった。おかげでものすごく濃密な一年間を過ごすことができたし、未踏だけでなく、様々な制作を通して多くの人や機会に恵まれた休学期間だった。

本当は、半年の休学で事足りたのだが、自分の考えをまとめる期間を残りの半年に充てようと考えて、思い切って一年間休学した。ただ、一度制作モチベーションが上がってしまうと、手を止めることができなくて、なんだかんだ残りの半年もずっと何かを作っていたような気がする。

ポートフォリオにいずれまとめなければならないという自分への鞭打ちも兼ねて、この休学期間中に行った制作・プロジェクト等を並べてみようと思う。

phonoma

未踏IT人材発掘・育成プログラムで開発した電子楽器。カメラで捉えた環境を音として奏でる。その楽器と奏者が「いつ」「どこで」演奏するかによって音が変化する。

卒業制作SPATIALIZERで試みた、空間から音を生み出す仕組みをベースに、より環境の要素を含めて音楽へと昇華する仕組みを考えた。また、持ち運びを前提とする楽器のため、筐体の小型化にも力を入れて開発に挑んだ。

Project Manager:Yoshinori Takesako

プロジェクト概要

https://taito-hasegawa.com/work/phonoma

Phonorium

物理シミュレーションを用いた電子楽器。ドレミの音を割り当てた球同士が衝突しあうことで音を奏でる。

マラカスやシェーカーをベースに、内部にかかる重力や、粒一つ一つに固有のノートを割り当てることで、シミュレーションでしか実現できない仕組みを構築した。

https://taito-hasegawa.com/work/phonorium

ModulePoeticCode OBJECT v0.1

映像を奏でる楽器。

映像やビジュアルを主体に作品制作を行う岡本斗志貴さんと、音楽と映像の関係性について話していた時に「なぜ映像のための楽器はないのか」という話に至った。今や音楽と映像は切り離せない関係であり、MVやライブなど、音と映像を組み合わせた表現は溢れている。しかし、手前でギタリストが汗をかきながら弦を掻き鳴らす中、映像はディスプレイに投影されているだけであり、映像の作り手は見当たらない。
ギタリストのように、映像も汗をかきながら生演奏することはできないか。こうして始まったのがModulePoeticCodeプロジェクトである。

OBJECT v0.1は、そのプロトタイプ第一号。

w/ Toshiki Okamoto

ミラノサローネ INTERDEPENDENCE w/Politecnico

2024年のミラノサローネでのミラノ工科大学の企画展示INTERDEPENDENCEに、卒業制作のSPATIALIZERをポスター展示させていただいた。

実際に現地に足を運び、現地の学生からフィードバックをもらったり、非常に貴重な機会だった。イタリアのご飯も美味しかった。

Tokyo Runway

筑波に新しくオープンする美容室sense of wonderの、TOKYO RUNWAYでのオープニングアクトでのパフォーマンス。空間演出と映像のディレクションを行った。

普段から髪を整えてもらっていた同じ系列の美容師さんに依頼され、異質なテーマの組み合わせによって成されるスタイリングを、シンプルなライティングで底上げすることを目標に演出設計を行った。

w/ Visual:Toshiki Okamoto, Music:Keita Shimamura

ウツリカワリ展

大学の有志で行った企画展示。電車の吊り革が何になったら面白いかという大喜利をしていたことをきっかけに、実際に吊り革にして展示してみようという完全なる勢いで企画した。同じ領域に属する学年もバラバラのメンバー各々が考えた、「こんな吊り革もありじゃないか」というアイデアを形にして、実際に電車の内部を模した空間に展示を行った。

w/ Ayaka Yamashita, Akira Sawada, Yuri Sadaki, Hitoshi Obi, Kohei Ichikita, Hitomi Hara, Yuna Nishimoto, Yusuke Kaneko

盆つくば HEARTLANDブース

筑波大学の同期で、現在はFUNCというデザイン事務所を主宰する田中陽君が、筑波駅に新しい夏祭りをつくる!と企画した盆つくば。田中陽君とは、コロナ禍での筑波大学の芸術祭を一緒に作ったこともあって、再びお祭りを一緒に作れたのは感慨深い。0からお祭りを作るって、本当に大変だし、偉大なる一歩でもあるんだなぁと実感したプロジェクトだった。

筑波駅にあるビアバーEngiの代表である松島さんが、炎天下の祭りの中で最高のビールを最高の状態で提供したいと提案を受けた。プレミアムビールHEARTLANDのためにオリジナルブースを設計・施工した。HEARTLANDが持つ自然的なモチーフをもとに、木材のみで構成した。日本の祭りに雰囲気が合うよう、暖簾を手作りし、オランダなどで見られる大きなバーカウンターと、日本の哀愁ある居酒屋を掛け合わせたような佇まいを目指した。

真夏の炎天下のなか、汗を垂らしながら設営を終えて飲んだビールの味が今でも忘れられない。

w/ Engi, FUNC, Yo Tanaka

https://func.group/

https://www.instagram.com/bontsukuba/

ModulePoeticCode OBJECT v1 (製作中)

OBJECTを使ってライブに導入させたいという話が挙がり、より映像を演奏しやすくしたOBJECT v1を開発した。

映像を演奏するためのトリガーとして、ボタン入力は前提として、「どういった配置が一番演奏しやすいか?」がテーマだった。シンプルなキーボード配列や、昔のゲームボーイの配列など、様々なボタン配置をリサーチする中で、最も映像の演奏に適した配置は、アーケードコントローラーなのではないかという話に至った。

手元を見ずとも操作できるよう、オリジナルのサイズで設計したキーキャップを採用し、よりライブでのシーンで使いやすいモデルになった。

w/ Toshiki Okamoto

道具(0)

「道具」をテーマに、

・サンプラーやビートマシン、シンセといった音楽のための道具

・開発していたOBJECTといった映像のための道具

特定の表現に特化した道具のみで構成するマシンライブを中目黒の光婉で行った。今やPCでどんな表現でもできる時代に、あえて使う道具に制約を設けることで表現を研ぎ澄ますことを目標にした。ほぼ即興でライブをしていたため、時間が経つにつれてネタが尽きてくる怖さもありつつ、使い慣れた道具とともに次の表現を捻り出す感覚は、自転車操業さながらのスリルがあった。

w/ Takuto Okamoto, Toshiki Okamoto, Keita Shimamura, Yugo Kumazawa

common v5.0.0 (開発中)

かれこれ4年目になる東急株式会社様とのプロジェクト。
東急沿線の街のアプリcommonは、立ち上げから今に至るまで、フラー株式会社に入ってからずっと関わってきたプロジェクトで、今年でv5.0.0を迎える。

自分は主にメジャーアップデートの企画・デザイン、広報を担当している。アプリ自体はポケットに入る小さなものだけど、街全体に関わるとても大きなサービスを担っていると、年々その意識が強くなっていく。いちデザイナーとして、プロダクトスケールが大きくなればなるほど、新規機能の追加は非常に難しくなっていくし、緊張感も高い一方で、自分一人では到底扱えない「街」というフィールドを開拓していくのは本当に楽しい。

大学一年生の時とかは、街への帰属意識とか、コミュニティへの理解が乏しかった。だから自分がこのアプリのデザインを担う意味みたいなのがイマイチ理解できていなかったと思う。だけど年を追うごとに、「その土地で制作を行う」人間が、地域とどう関わるかの重要性が身に染みてわかってきた。いち社会に属する一人として制作する傍、社会自体をどう改善していくか、そういったテーマを携えて制作しつづけていきたい。

https://www.common.tokyu.co.jp/

https://www.fuller-inc.com/works/tokyu

App Store

Play Store

Roast (製作中)

音の塊「音塊」で演奏する楽器。

空間や環境、重力など、捉えずらい対象を、音にすることで表現として身近にすることを目標に制作してきた中で、「音の手触り」のようなものに興味を持った。色々な展示を通して、音というアウトプットに対して、反応は本当に十人十色なことを改めて実感した。が故に、限りなく感覚的な音への印象をもっと共感しやすい形でコミュニケーションすることはできないかと思った。もっというと、音を知覚できる方法を増やすことはできないかと思ったのだ。音の可視化というのは昔から試みられてきた手法ではあるが、手を使って触ったり、自分で作ってみたりすることでより身体性を持って音を知覚できる方法を考えた。

そこで、音に触れる形を3Dプリンターで出力することで、より音を楽しむコミュニケーションツールになることを目指したのがRoastだ。音塊を回しながら演奏する様が肉焼き機みたいなのでRoastと名付けた。

SPATIALIZERとかphonomaで複雑な仕組みを通った先が、案外シンプルでフィジカルな楽器になるのが、自分でもこうなるかぁと笑ってしまった。これからどうなるかな。